知的障害による障害年金受給について

[記事公開日]2017/10/01
[最終更新日]2020/08/17

知的障害の方々も障害年金を申請できます。ですが、先天性疾患特有の申請の難しさや注意点がありますので、記事内容にあるように申請準備の注意点などを参考にして頂き、年金受給漏れのないようにして頂ければと思います。

 

知的障害の特徴

知的障害とは、知的能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態のことです。

かつては、精神薄弱や精神遅滞という言葉が使われていましたが、日本の法律・行政用語では知的障害という表現で統一されるようになっています。

 

原因は生理的・病理的・心理、社会的な要因と分ける事ができますが、染色体異常による場合は、身体奇形を伴うことが多く、出産直後に判明するものも少なくありません。

 

身体発達に異常がない場合には、乳幼児の発達課題を乗り越えることができず、少しずつ明らかになってくることが多くみられます。言葉の遅れ、遊びの不得手、体の動きの不器用さなどから判明してきます。

 

知的能力の遅れだけではなく、社会生活への適応にも難のあることがみえてきます。学校教育の方法や社会保障をどのように提供するかなど、行政援助と関連して、軽度(知能指数ないし発達指数が70~50程度)、中度(同50~35程度)、重度(同35以下)、最重度(同20以下)と分類されています。

 

 

知的障害での障害年金の認定基準

知的障害で障害年金を受給する場合の、大枠の認定基準は以下の通りです。

 

等級 障害の程度
1級 知的障害があり、食事や身のまわりの事を行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難である為、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの
2級 知的障害があり、食事や身のまわりの事などの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られる為、日常生活にあたって援助が必要なもの
3級 知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの

 

それぞれの症状を一見で「この等級」と見分ける事は難しい為、個別具体的に申請書や診断書の内容をもって判断される事になります。

 

また、認定要領には以下のようにあります。

・知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活の様々な場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する。

・知的障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存している時は、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

 

つまり、知能指数の数字の結果だけで判断するのではなく、本人の生活状況、どれだけ周囲の援助が必要なのかを判断し、その他の精神疾患の症状も合わせて総合的な日常生活の状況や合併症、社会適応力から認定を行う、という取り決めになっています。

 

また、就労をされている方についても、労働に従事しているからといって直ちに日常生活能力が向上したものとは捉えず、その療養状況や職場での援助の内容や周囲との意思疎通の状況を十分に確認したうえで判断し、認定するものとされています。

 

しかし、実際の精神疾患での障害年金請求は、勤務をしている状態で2級の認定を受けるのは難しいと言わざるを得ません。

申請の際は、就労場所や日常生活上での困難な点(仕事や日常生活で困っていること、仕事や日常生活でどんな支障が生じているかを可能な範囲で具体的に)を医師によって診断書作成に反映してもらう事や、申立書にも出生、幼少期から現在に至るまでの状況・様子と現在の障害の状態をできるだけ具体的かつ詳細に記述することで対応は可能です。

 

 

初診日と障害認定日について

知的障害は、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるものをいう、とされています。

ですので、その初診日が未成年の年齢の中で特定できなかったとしても、通常、20歳前に初診があったものとして扱われます。初診日の証明(受診状況等証明書の準備)は必要なく、診断書やその他の資料で提出をする事が可能です。

 

ただし、18歳までにあらわれる疾病とされている為、ほとんどが20歳前傷病の障害基礎年金申請20歳前傷病の障害基礎年金申請について詳しくは ⇒ こちらとなります。

例え、18歳や20歳以降に会社勤めをしていて厚生年金に加入していても、障害厚生年金で申請を行う事は難しいでしょう。

そうなると何が問題なのか?

前章では知的障害の認定基準1級~3級まで説明をしましたが、障害基礎年金には3級認定は制度として存在せず、2級までとなっています。

症状の認定等級が2級以上に認められなければ不該当となってしまうのです

 

そして、20歳前傷病の障害年金申請となりますので、障害認定日は基本的に20歳到達日となる事が多いです。

そうなると、障害年金制度を以前からご存知の方は、例えばお子様が20歳に到達するタイミングの少し前から申請の準備を行い、クリニックへ診断書の依頼もされるのですが、制度を知らずに、本人が20歳を過ぎて一定時間が経過していると、過去20歳到達時点での診断書を作成してもらう事が難しくなる場合があり、その場合は20歳到達時に遡って障害年金を受給する事は難しくなります。

 

障害年金申請について気付いた時点で、年金事務所や病院・クリニック、または障害年金専門の社会保険労務士へご相談される事をお勧めします。

 

 

知的障害での障害年金申請のポイント (診断書書式や作成依頼のポイント)

実際の申請を準備する際のポイントとしては、やはり診断書の準備が重要になってきます。

 

知的障害の場合、通常は通院の必要がない為、診断書作成の為に1回または数回

(病院による)受診をし、診断書を作成してもらいます。

 

診断書作成医師に対しては、簡単な計算や漢字の読み書きだけではなく、単身生活を想定した場合、何ができないか、何が困るか、現在の生活のおいて家族はどういった支援をしているか、どういった失敗や困難があるのかを細かく積極的に伝え診断書に症状を正確に反映してもらうようにしましょう。

診断書は精神疾患の書式を使用しますが、

【日常生活能力の程度】欄は知的障害の専用の申請書式があります。

 

また、診断書には教育欄について記載する箇所があります。

先天性の疾患ですので、学生時代の生活の中でも困難な事や苦労があった事かと思われます。

学生当時の困難な具体的なエピソードを医師に積極的に伝え、普通学校・学級だった場合は、どうして支援学校・学級ではなかったのか(例えば、通学圏内に支援学校・学級がなかった、支援学校・学級の少ない市町村だったなど)、その結果学校ではどんな問題があったのか(例えば、勉強についていけなかった、イジメにあった事がある、不登校になった経験がある、など)を診断書に記載してもらう、または請求者作成の病歴・就労状況等申立書に記載する事で日本年金機構に状況を訴え、不当に低い等級の認定を受けたり、不支給認定を受けないように申請を行います。

ただ、病歴・就労状況等申立書も、その作成に決まりごとやポイントがたくさんあります。

知的障害の場合は、幼少期~未成年の間に発症されるとされていますので、例え初診日が10歳の時点であったとしても、病歴・就労状況等申立書は出生時から記載しなければ、窓口での受理を断られるケースもあります

ご自身で申請を行い、等級が下がり少ない障害年金の年金額になってしまうのは困るという方は、ぜひともご自身で準備される前に、当オフィスにご相談ください。

 

まとめ

知的障害での申請は、20歳前傷病の障害年金申請となってしまう点、3級認定が存在しない点など、他の疾病などの通常申請より特殊な状況が多いのが特徴です。

ややこしい申請書の準備や細かいチェック、診断書作成の為の医師との連携など、ご本人様やご家族様にとって難しい作業はご委託を頂く事で、全てをお任せ頂き、より最適な障害年金受給の申請を任せて頂く事が可能です。