[最終更新日]2017/07/23
近年、精神疾患で障害年金を受給される方はたくさんいらっしゃいます。ではそんな精神疾患の中でも障害年金を受給できる場合とできない場合はどこか違うのか、解説していきます。
障害年金はうつ病や統合失調症でも受給ができる
先日こんな相談を受けました。
A「私、前からうつ病で会社を休職していたんですけど、会社で決められている休職期間もあと2か月で期間が満了になって、復帰できないと退職しないといけないみたいなんです。健康保険から傷病手当金を受けてはいるのですが、1年6か月経った後って傷病手当金ももらえなくなるみたいで、会社も辞めてしまったらどうやって生活していけばいいのか不安なんです。」
私「そんな場合は障害年金の申請を検討しましょう。傷病が理由で休職していたり、ご退職されるのであれば、受給できる可能性も高まります。」
A「障害、年金ですか?確かにうつ病ですが、障害者の方々の給付が受けられるんですか?」
私「それぞれの傷病の状況や、生活状況、就労状況にもよりますが、うつ病ならば受給できる可能性は高いです。Aさんはずっと会社員をされて厚生年金に加入されていたので、上乗せ部分の年金ももらえると思いますよ。」
うつ病や統合失調症などの精神疾患により一般の方々のように就労できない方々には障害年金が受給できます。
通常の障害年金申請と同様、『初診日要件』、『認定日要件』などを確認し、可能であれば申請をトライする事をお勧めします。
では、精神疾患の中で障害年金の対象となる疾病はどういったものでしょうか?
疾病による基準の違い
どういった精神疾患は障害年金の対象になるのか。
それを考えるには、ICD-10コード(http://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/)というWHO「国際疾病分類」の中で区分されている対象疾病について知る必要があります。
具体的に、対象となる疾病とその区分は以下のようになります。
- 統合失調症、妄想性障害→F2
- 気分障害(うつ)→F3
- 症状性を含む器質性精神障害→F0
- てんかん→G40、G41
- 知的障害→F7
- 発達障害→F8、F9
また、その疾病単体では障害年金の対象とならないものが以下になります。
- 神経症→F4
- 摂食障害、睡眠障害→F5
- 人格障害→F6
障害年金では診断書に傷病名を記載してもらい申請を行いますが、その疾病がコードF4~F6のものだけでは申請が難しくなります。
ただし、F2やF3の症状がある事が証明されれば、受給できる可能性は高まります。
(その他、精神疾患による障害年金受給のポイント解説については ⇒ こちら )
受給できないケース
受給できないケースは、疾病の種類だけではなく、申請者の就労状況や生活に関する状況が、その申請に大きく影響します。
周りの方々の援助を受けずにフルタイムで勤務できる、または一人暮らしをしている方というのは、申請が通りづらくなります。
実際には、申請書の中の『日常生活能力の判定』『日常生活能力の程度』のそれぞれの判断基準によって判断されます。
日常生活能力の判定
『日常生活能力の判定』では以下の項目を点数化し総合的に判断します。
(1)適切な食事
(2)身辺の清潔保持
(3)金銭管理と買い物
(4)通院・服薬の状況
(5)他人との意思伝達及び対人関係
(6)身辺の安全保持及び危機対応
(7)社会性
日常生活能力の程度
『日常生活能力の程度』ではその方の生活状況や就労状況から、日常生活の状況を5段階に区分し点数化し判断します。
精神疾患での障害年金申請方法
精神疾患以外の障害年金と同様に、申請書以外には診断書、病歴・就労状況等申立書、住民票、受診状況等証明書(傷病初診時から転院している場合)、配偶者や子の収入確認、など必要書類を年金事務所や街角年金相談センター、住所地の市区町村役場へ提出します。
精神疾患の障害年金では診断書が精神の障害専用の診断書を使用します。
これは年金事務所などでも書式が受け取れますし、厚生労働省のホームページからダウンロードすることも可能です。(http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todoke/shougai/20140421-23.html)
診断書には現在診て頂いている病院にて診断書を書いてもらいますが、現在の状況や障害年金を受給する為のポイントを担当の先生に正確に伝えて書いてもらいます。
ここを大体で準備してしまうと、実際には受給できるような状態でありながら、不支給となってしまう方は少なくありません。
まとめ
精神疾患の障害年金請求は、他の障害の認定がわかりやすいものと違って、その時の状態によって左右される為、決して簡単な申請ではありません。
しかし、現在の障害年金受給者の内訳では、精神疾患により障害年金を受けている方々は傷病別に見ても一番多くいらっしゃいます。
ただ知らなかった、というだけで、申請をすれば受けることができた年金を受けられないのは大変もったいなく、知識や情報の差が生活レベルに影響してしまうと言えます。
また、診断書の作成を医師に依頼する事は、障害年金の制度についても説明する事が難しく、ここで断念する、もしくはここを適当に行って不支給になってしまうケースも多々見受けられますので、不安な場合はお気軽に当オフィスにご相談ください。