障害年金を受給する際の調整について

[記事公開日]2017/05/28
[最終更新日]2017/07/08

障害年金を受給する場合に、多くの方々が気になるポイントに収入や他制度との調整・制限、税処理の流れなどがあります。今回はそういった周辺制度との関係について見ていきます。

 

収入がある場合、障害年金は受けられるのか?

障害があって働けない、休職を余儀なくされる。

そんな場合に障害年金を生活や治療の支出に役立てる事は本義です。

では、障害があっても勤務はでき、給与収入を得ている方は障害年金を受けられないのでしょうか?それとも収入の分だけ年金額が調整されるのでしょうか?

結論から申し上げますと、給与収入がある方も障害年金は受給でき、年金額の調整を受ける事もありません

年金決定や等級認定の時点で、勤務ができている事実から、勤務もできない状況の方々より等級が低くなる事はあり得ますが、受給が決定したものが調整される事はありません。

障害年金受給の要件にあるように、年金保険料を納め、初診日要件が満たせている事が重要です。

ただし、例外的に制限を受ける場合が【20歳前傷病の障害年金】制度です。

(詳しい【20歳前傷病の障害年金】の説明は⇒こちら

20歳未満で初診日があるケースですが、これは公的年金の保険料を納付する義務がないため、年金保険料を納付できていなかったことが原因で所得制限が設けられています。

詳しい制限される金額についても【20歳前傷病の障害年金】の説明の中にありますので、参考にしてみてください。

 

傷病手当金や生活保護を受給していても障害年金は受けられるのか?

傷病手当と障害年金次に、健康保険の傷病手当金と障害年金受給の調整についてです。

健康保険制度の傷病手当金とは、業務外の病気や怪我(私傷病)で療養のために働けないというときに健康保険(協会けんぽ・健康保険組合等)から支給される傷病手当金という保険給付があります。

  • 傷病手当金の支給の条件は、協会けんぽや健康保険組合の被保険者が
  • 業務外の傷病で療養中であること(業務上であれば労災申請となります。)
  • 療養のために労務不能であること
  • 4日以上仕事を休んでいること(連続3日の待機期間が必要)
  • 給与の支払いがないこと(欠勤扱いとなっていること)

これらの条件が揃い申請を行うと、標準報酬日額(直近1年の平均)の2/3相当額が休職している日数分受け取れます。

この手当と障害年金は調整の対象となります。

両方は受給できません

具体的には、傷病手当金と障害厚生年金の支給期間が重なってしまった時には、傷病手当金の1日当たりの額と障害厚生年金の額を360で割った額を比較し、傷病手当金の方が高ければ(傷病手当金の日額 > 障害厚生年金÷360)、傷病手当金と障害厚生年金の差額が傷病手当金として支給されます。

つまり、傷病手当金の金額を超える分は厚生年金からも受給できないという事です。

傷病手当金を受けられる間は障害年金を申請しても受給ができないのですが、傷病手当金は受給開始から長くても1年6か月が支給限度となっています。

ですので、傷病手当金の支給が終了する約3、4か月前には障害年金の申請を行い、傷病手当金の終了後も切れ目なく障害年金を受給できるようにしておく事が最善の方法と言えます。

 

生活保護を受給していても障害年金は受けられるのか?

生活保護を受けておられる方が障害を持ち、初診日の時点では勤務し、納付要件も満たせていた。

または、生活保護と障害年金の順番が逆の場合もありますが、基本的にこの2つの制度も併給して受給する事はできません

両方を満額で受給できるという事ではなく、多くの場合で生活保護の方が金額は多い為、まず障害年金を受給し、生活保護の金額に満たない部分の差額を生活保護費として受給します。

ですので、先に生活保護を受給している方が、障害を持って障害年金を申請できるという場合も、申請する事で追加的に受給できることは基本的にありませんので、申請を行うメリットはありません。

 

障害者手帳について

障害者手帳また、障害年金の受給が決まっても、身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳、療養手帳は自動的に受け取れる訳ではありません。

これらの手帳の管轄は市役所であり、障害年金は基本的には日本年金機構です。(障害基礎年金は市役所で申請が可能ですが、それでも部署が異なります。)

各種手帳を発行する事で、公共サービスなどで料金負担の免除が受けられますので、別途で申請をして頂く必要があります。

なお、等級の判定基準も異なりますので、障害者手帳が2級だからといって、障害年金も2級だとは限りません。

基本的には障害年金の等級の方が厳しく見られます。

なお、精神疾患で障害年金を受給していて精神障害者保健福祉手帳の交付をこれから行う場合は、障害年金の決定を待ってからであれば手帳用の診断書が不要(診断書代の節約)になります。

精神障害者保健福祉手帳は診断書なしで障害年金の等級に合わせてもらう事が可能です。

 

障害年金を受給した場合の税処理は? その他制度について

障害年金に税金はかかるのか?

結論から言いますと非課税で税金はかかりません

障害年金は病気やケガなどで働けない方の所得補償でありますので、課税されません。

他の年金制度では、遺族年金も同様に非課税です。

しかし、老後に受給する老齢年金は課税対象です。

最後に、国民年金の納付についてですが、障害年金を受給している方は「国民年金保険料免除理由該当書」を提出する事によって、国民年金保険料の納付の義務が全額免除されます。

免除期間については部分免除ではなく全額免除ですので、保険料は支払わなくても、将来の老齢年金は満額で納付要件を満たすことができます。

障害基礎年金の3級までは法定免除が継続しますが、状態が軽くなり3級非該当となってしまい3年を経過した場合は法定免除が解除されます。